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令和6年(2024年)問7|民法総合

Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.CがBに対し甲建物をAから買受けたとの虚偽の話をしたので、これを信じたBが甲建物の占有を任意にCに移転した場合、AはCに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。

2.Bが、Aの甲建物への立ち入りを建物入り口を閉ざして拒んだときは、Aは甲建物の間接占有が侵奪されたものとして、Bに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することができる。

3.Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始を知るまでは、Bによる甲建物の占有を承継しない。

4.AとBのいずれもが死亡した場合、本件契約は当然に終了する。


【答え:1】


1.CがBに対し甲建物をAから買受けたとの虚偽の話をしたので、これを信じたBが甲建物の占有を任意にCに移転した場合、AはCに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。

1・・・ 正しい

占有回収の訴えは、「占有していたものを無理やり奪われた場合」に、その占有を取り戻すための手段です(民法200条1項)。
ここで重要なのは、「無理やり奪われた」ことが条件だという点です。つまり、占有者の意思に反して物の所持を失った場合だけが対象です。

もし占有者が「自分の意思で」占有物を引き渡した場合には、たとえその意思が騙された結果であっても、「無理やり奪われた」ことにはなりません
つまり、占有回収の訴えを使うことはできないです。

判例(大正11年11月27日)でも、「他人の騙しによって占有者が任意に占有を移転した場合は、占有回収の訴えの対象とならない」とされています。

よって、AはCに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。」という記述は正しいです。

 


2.Bが、Aの甲建物への立ち入りを建物入り口を閉ざして拒んだときは、Aは甲建物の間接占有が侵奪されたものとして、Bに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することができる。

2・・・ 誤り

占有回収の訴えとは、自分の占有(物を持っている状態)が第三者に奪われたときに、それを取り戻すための方法です。しかし、この訴えが認められるのは、「占有が自分の意思に反して、第三者によって奪われた場合」に限られます。

今回のケースでは、B(借主)は建物を借りている立場なので、その建物の占有権を持っています。一方、A(貸主)は間接的に建物を占有している状態(=間接占有)にあります。

Bが建物の入口に鍵をかけてAの立ち入りを拒んだとしても、B自身が占有権者であることに変わりはありません。また、Aの間接占有も第三者によって奪われたわけではありません。したがって、この場合、Aが占有回収の訴えを使うことはできません。よって、本肢は誤りです。


3.Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始を知るまでは、Bによる甲建物の占有を承継しない。

3・・・ 誤り

被相続人(この場合はB)が死亡すると、その時点でBが持っていた占有は、相続の開始とともに相続人(この場合はD)に自動的に引き継がれます。
つまり、Dが「相続の開始を知った時点」ではなく、「Bが死亡した時点」で占有は承継されるのです。
これは、占有が相続財産の一部とみなされるためで、特に特別な事情がない限り、相続の開始と同時に相続人に移ると考えられています。

この考え方は、最高裁判所の判例(昭和44年10月30日)でも示されています。この判例では、被相続人が死亡した時点でその占有が相続人に引き継がれると明確にされています。

よって、「Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始と同時に、Bによる甲建物の占有を承継する」ので本肢は誤りです。


4.AとBのいずれもが死亡した場合、本件契約は当然に終了する。

4・・・ 誤り

賃貸借契約は、貸主や借主が亡くなったとしても、契約自体は終わりません。亡くなった方の契約上の立場(地位)は、法律に基づき相続人に引き継がれます。そのため、「どちらかが死亡したら契約が当然に終了する」というのは誤りです。


令和6年・2024年の宅建過去問

問1
法律関係
問2
委任契約
問3
共有
問4
民法総合
問5
債務不履行
問6
地上権
問7
民法総合
問8
民法の条文
問9
承諾
問10
契約不適合責任
問11
借地権
問12
借家権(建物賃貸借契約)
問13
区分所有法
問14
不動産登記法
問15
都市計画法
問16
都市計画法(開発許可)
問17
建築基準法(建築確認)
問18
建築基準法
問19
盛土規制法
問20
土地区画整理法
問21
農地法
問22
国土利用計画法
問23
所得税(住宅ローン控除)
問24
不動産取得税
問25
不動産鑑定評価基準
問26
重要事項説明
問27
営業保証金
問28
報酬計算
問29
宅建士
問30
クーリングオフ
問31
監督処分
問32
媒介契約
問33
広告
問34
手付金等の保全措置
問35
契約書(37条書面)
問36
保証協会
問37
35条書面
問38
免許
問39
案内所
問40
契約書(37条書面)
問41
35条書面
問42
死に関する告知
問43
宅建士
問44
契約書(37条書面)
問45
住宅瑕疵担保履行法
問46
住宅金融支援機構
問47
不当景品類及び不当表示防止法
問48
問49
土地
問50
建物