独学合格プログラム

保証協会

宅建業者が営業を開始するには、「営業保証金制度」もしくは「保証協会制度」を利用しなければなりません。今回は「保証協会制度」について解説していきます。営業保証金制度を利用するには、本店だけでも1000万円を必要とします。しかし、これでは、なかなか一般の人は営業保証金を供託することできず宅建業を営めません。そこで、保証協会制度があります。

保証協会とは

保証協会とは

  • 宅建業者のみを社員とし
  • 一般社団法人であり
  • 国土交通大臣の指定を受けている

ものを言います。

保証協会の業務

保証協会の業務には、必ず行うべき「必要的業務」と、必ずしも行う必要はない「任意的業務」があります。

必要的業務

  1. 苦情の解決
  2. 研修業務
  3. 弁済業務
苦情の解決
  • 保証協会は、宅建業者の相手方等から社員の取り扱った宅建業に係る取引に関する苦情について解決の申出があったときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するとともに、当該社員に対し当該苦情の内容を通知してその迅速な処理を求めなければならない。
  • 保証協会は、上記申出に係る苦情の解決について必要があると認めるときは、当該社員に対し、文書若しくは口頭による説明を求め、又は資料の提出を求めることができる。
  • 社員は、保証協会から前項の規定による求めがあつたときは、正当な理由がある場合でなければ、これを拒んではならない。
  • 保証協会は、第一項の申出及びその解決の結果について社員に周知させなければならない。
研修業務
保証協会は、一定の課程を定め、取引士の職務に関し必要な知識及び能力についての研修その他の業務に従事し、又は従事しようとする者に対する研修を実施しなければならない。
弁済業務
保証協会は、社員と取引士をしたお客様に対し、損害を弁済(還付)しなければならない

任意的業務

  1. 一般保証業務
  2. 手付金等の保管業務
  3. 宅建業の健全な発達を図るために必要な業務
  4. 研修費用の助成
一般保証業務
社員と宅建業に関して取引した者が有する債権について、保証協会が連帯保証する
手付金等の保管業務
社員が買主から受領する「手付金」や「中間金」を、保証協会が社員の代わりに預かる(保管する)
宅建業の健全な発達を図るために必要な業務
例えば、下記のような業務があります。

  • 一般の消費者を対象とした不動産無料相談所を開設する
  • 不動産税制に関する軽減特例証明の審査業務

研修費用の助成
保証協会は、「全国の宅建業者を直接又は間接の社員とする一般社団法人」に対して、宅地建物取引士等(・従業者等)に対する研修の実施に要する費用の助成をすることができる(平成29年度の法改正により追加

 保証協会への加入

 弁済業務保証金分担金の納付

保証協会に加入しようとする宅建業者は、加入しようとする日までに弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならない。

弁済業務保証金分担金の納付額

主たる事務所(本店):60万円
従たる事務所(支店):1ヶ所あたり30万円

例)本店と支店2ヶ所持つ宅建業者の場合、60万円+(30万円×2)=120万円を保証協会に納付しなければならない

納付すべきもの

弁済業務保証金分担金は「金銭」で納付しなければならない。

【注意点】
弁済業務保証金分担金は、有価証券で納付することはできない

弁済業務保証金

上記で解説した「弁済業務保証金分担金」は社員(宅建業者)が保証協会に納付するもの。これから解説する「弁済業務保証金」は保証協会が供託所に供託するものです。

  • 保証協会は、社員から弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から1週間以内に、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。
    ※「その納付を受けた額に相当する額」とは、本店のみであれば60万円です。
  • 弁済業務保証金の供託は、法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所にしなければならない。
  • 保証協会は、弁済業務保証金を供託したときは、その供託物受入れの記載のある供託書の写しを添附して、その旨を社員が免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。

【注意点】

  • 免許権者への届出については、保証協会が行う(宅建業者である社員は行わない)
  • 保証協会が供託する弁済業務保証金は、社員が本店のみである場合、60万円であり、1000万円を供託するわけではない
  • 保証協会が供託する場所は、「法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所」であり、「社員の本店最寄りの供託所」ではない

社員が事務所を増設した場合

  • 保証協会の社員となったあと、事業拡大のために事務所(支店)を新設した場合、新設した日から2週間以内に30万円(1支店の場合)の弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければなりません。
  • この期間内に納付しない場合、社員としての地位を失います。
  • 社員としての地位を失った場合、その日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません。
  • これを怠ると業務停止処分または免許取消処分の対象となる

弁済業務保証金の還付

宅建業者と「宅建業に関し取引をした者」でその取引で損害を受けた者は、弁済業務保証金から還付を受けることができます。

還付とは?

宅建業者が供託した弁済業務保証金から損害(債権)の弁済を受けることをいう

【注意点】
広告代理店の広告費用、建物の管理費用、内装業者や電気工事業者の工事代金などが支払われないことによる損害については、「宅建業に関する取引」によって生じた債権ではないので、還付請求できません。

還付請求の流れ

  1. 還付請求者(損害を受けたもの)は保証協会へ認証の申し出をする
  2. 保証協会が債権について認証する
  3. 還付請求者は「供託所」に対し、還付請求をする
  4. 供託所は還付請求者に還付する
  5. 供託所は国土交通大臣に「還付した旨」を通知する
  6. 国土交通大臣は保証協会に「還付された旨」を通知する
  7. 保証協会は6の通知を受けてから2週間以内に還付額に相当する弁済業務保証金を供託所に供託する
  8. 保証協会は社員に対して、立て替えたお金(還付充当金という)を納付するよう通知する
  9. 通知を受けた社員は通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付する。
    納付しないと、社員の地位を失う。社員の地位を失ってから1週間以内に宅建業を行い続けるには営業保証金を供託しなければならない。

弁済業務保証金の取り戻し

以下の2つの事由に該当することとなった場合、保証協会は弁済業務保証金を取り戻すことができます。

  1. 社員がその地位を失った場合
  2. 事務所の一部を廃止したために弁済業務保証金分担金の額が納付すべき額を超えた場合

弁済業務保証金の取り戻しの手続き

社員がその地位を失った場合 還付請求者に対して6ヶ月以上の期間を定めて公告し、その期間内に申し出がなかった場合、弁済業務保証金を取り戻せる。
事務所を一部廃止した場合 公告せずに、直ちに弁済業務保証金を取り戻すことができる

弁済業務保証金準備金

  • 保証協会は、還付充当金の納付がなかったときの弁済業務保証金の供託に充てるため、「弁済業務保証金準備金」を積み立てなければならない。
  • 保証協会は、弁済業務保証金から生ずる利息又は配当金を弁済業務保証金準備金に繰り入れなければならない。

特別弁済業務保証金分担金

  • 保証協会は、弁済業務保証金を供託する場合において、弁済業務保証金準備金をこれに充ててなお不足するときは、その不足額に充てるため、社員に対し、「特別弁済業務保証金分担金」を宅地建物取引業保証協会に納付すべきことを通知しなければならない。
  • 前項の通知を受けた社員は、その通知を受けた日から1ヶ月以内に、その通知された額の特別弁済業務保証金分担金を当該保証協会に納付しなければならない。
  • 上記期間内に特別弁済業務保証金分担金を納付しない場合、社員としての地位を失う

事業計画書

  • 保証協会は、毎事業年度開始前に、収支の見積り等の一定事項を記載した事業計画書を作成し、国土交通大臣の承認を受けなければなりません。(事業計画を変更しようとする場合も、国土交通大臣の承認が必要)
  • 保証協会は、事業年度ごとに、国土交通省令で定める様式による事業報告書を作成し、毎事業年度経過後3ヶ月以内に、国土交通大臣に提出しなければならない。

宅建合格するには具体例をキチンとイメージして理解する必要があります。具体例については、「独学合格プログラム」で解説します。

宅地建物取引業保証協会は、第六十四条の九第一項又は第二項の規定により弁済業務保証金分担金の納付を受けたときは、その日から一週間以内に、その納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。

 弁済業務保証金の供託は、法務大臣及び国土交通大臣の定める供託所にしなければならない。
 第二十五条第三項及び第四項の規定は、第一項の規定により供託する場合に準用する。この場合において、同条第四項中「その旨をその免許を受けた国土交通 大臣又は都道府県知事に」とあるのは、「当該供託に係る社員である宅地建物取引業者が免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に当該社員に係る供託をし た旨を」と読み替えるものとする。