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令和6年(2024年)問2|委任契約・準委任契約

委任契約・準委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.売主が、売買契約の付随義務として、買主に対して、マンション専有部分内の防火戸の操作方法につき説明義務を負う場合、業務において密接な関係にある売主から委託を受け、売主と一体となって当該マンションの販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者も、買主に対して、防火戸の操作方法について説明する信義則上の義務を負うことがある。

2.受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。

3.委任契約で本人が死亡しても代理権が消滅しない旨を合意して代理人に代理権を与えた場合、本人が死亡しても代理権は消滅しない。

4.委任は、当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じない。


【答え:4】


1.売主が、売買契約の付随義務として、買主に対して、マンション専有部分内の防火戸の操作方法につき説明義務を負う場合、業務において密接な関係にある売主から委託を受け、売主と一体となって当該マンションの販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者も、買主に対して、防火戸の操作方法について説明する信義則上の義務を負うことがある。

1・・・ 正しい

売買契約の付随義務として、売主が買主に対して説明する義務を負う場合、その売主と密接な関係にあり、売主と一体となって勧誘、説明等から引渡しに至るまで販売に関する一切の事務を委任された宅地建物取引業者も、売主と同様に説明を行う信義則上の義務を負うことがあります(最判平17.9.16)。

宅地建物取引業者(宅建業者)は、売主から委託を受けて販売事務を行い、売主と一体となって活動している場合、実質的には売主の代理人のような立場にあります。

このため、買主に対して適切な説明を行う義務を負います。特に、防火戸の操作方法のようにマンションの安全や使用に関わる重要な事項については、説明を行う義務(付随義務)を負います。

信義則上の義務とは、民法第1条第2項に基づく義務で、契約当事者やそれに準ずる立場の人が、社会通念上の誠実な取引を行うために必要とされる行為や配慮を求められるものです。たとえば、商品やサービスの使用に必要な情報を適切に説明する義務などがこれに該当します。

信義則(信義誠実の原則)は、法律や契約に明記されていなくても、人々が社会や取引の中でお互いに誠実に行動するべきだという基本的なルールを示しています。


2.受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。

2・・・ 正しい

受任者は、①委任者の許諾を得たとき、又は②やむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができません(民法644条の2第1項)。よって、正しいです。

【趣旨】

委任契約は、受任者個人の能力や信頼に基づいて締結されることが多いため、受任者が第三者に業務を再委託することは慎重に扱う必要があります。


3.委任契約で本人が死亡しても代理権が消滅しない旨を合意して代理人に代理権を与えた場合、本人が死亡しても代理権は消滅しない。

3・・・ 正しい

代理権は、原則として本人の死亡によって消滅します(民法111条1項)。しかし、本人の死亡によっても代理権を消滅させない旨を特約することが認められています。そのため、委任契約で本人が死亡しても代理権が消滅しない旨を合意して代理人に代理権を与えた場合、本人が死亡しても代理権は消滅しないので、正しいです。

■実務的な利用例

遺産管理や事業承継に関する代理権を付与する場合、本人の死亡後も代理人に継続して権限を与える必要がある場合に、このような特約が用いられることがあります。


4.委任は、当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じない。

4・・・ 誤り

委任は、当事者の一方が法律行為をすること(事務を行うこと)を相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じます(民法643条)。

この定義から分かるように、委任契約は「仕事を完成すること」を約束するものではなく、「事務を行うこと」を約束するものです。

本肢は請負の説明です。よって、誤りです。

委任契約と請負契約との違い

委任契約:仕事の完成を目的とせず、一定の事務処理を遂行する義務がある。(報酬は原則なく、特約を定めることで報酬を請求できる)

請負契約:仕事の完成を目的とし、その結果に対して報酬が支払われる契約。

したがって、「仕事を完成すること」や「その結果に対して報酬を支払うこと」が要件となるのは、請負契約です。

 


令和6年・2024年の宅建過去問

問1
法律関係
問2
委任契約
問3
共有
問4
民法総合
問5
債務不履行
問6
地上権
問7
民法総合
問8
民法の条文
問9
承諾
問10
契約不適合責任
問11
借地権
問12
借家権(建物賃貸借契約)
問13
区分所有法
問14
不動産登記法
問15
都市計画法
問16
都市計画法(開発許可)
問17
建築基準法(建築確認)
問18
建築基準法
問19
盛土規制法
問20
土地区画整理法
問21
農地法
問22
国土利用計画法
問23
所得税(住宅ローン控除)
問24
不動産取得税
問25
不動産鑑定評価基準
問26
重要事項説明
問27
営業保証金
問28
報酬計算
問29
宅建士
問30
クーリングオフ
問31
監督処分
問32
媒介契約
問33
広告
問34
手付金等の保全措置
問35
契約書(37条書面)
問36
保証協会
問37
35条書面
問38
免許
問39
案内所
問40
契約書(37条書面)
問41
35条書面
問42
死に関する告知
問43
宅建士
問44
契約書(37条書面)
問45
住宅瑕疵担保履行法
問46
住宅金融支援機構
問47
不当景品類及び不当表示防止法
問48
問49
土地
問50
建物