都市計画の区域区分と地域地区(用途地域等)
目次
都市計画区域を指定したら、次に何をするか?この区域は「建物を建てて行く区域」、この区域は「建物を建てるのを控えて自然環境を保護する区域」という風に分けていきます。
区域区分(市街化区域と市街化調整区域の区分)
都市計画区域については、市街化区域と市街化調整区域の区分を定めることができます。このように市街化区域と市街化調整区域とに分けることを「区域区分を定める」と言います・。区域区分は必ず定める必要はなく、区域区分を定めない部分を「非線引都市計画区域」と言います。
【注意点】
都市計画区域内は区域区分を必ず定めるわけではない。定めない場合もある
市街化区域とは? |
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市街化調整区域とは? | 市街化を抑制すべき区域 ※市街化を禁止する区域ではない! |
都市計画区域を区域区分をしたこと、建物を建てていく市街化区域が定められたのですが、その後はどうするのか? 市街化区域では、さらに細かくどんな用途の建物を建てていくのかを決めていきます。
用途地域
市街化区域内には少なくとも(=必ず)用途地域を定め、市街化調整区域には、原則用途地域を定めません。
つまり、市街化区域内では、具体的に建築できる建築物の「用途」を規制することによって、この区域では、住宅を建てていきましょう!この区域では商業ビルを建てていきましょう!この区域では工場を誘致していきましょう!と細かく計画していくわけです。
そして、用途地域は12個のあります。
第1種低層住居専用地域 | 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 【イメージ】閑静な住宅街 |
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第2種低層住居専用地域 | 主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 【イメージ】個人商店やコンビニ等の小規模店舗も建築可 |
第1種中高層住居専用地域 | 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 【イメージ】3階以上のマンションが建つ区域 |
第2種中高層住居専用地域 | 主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 【イメージ】3階以上のマンションだけでなく、事務所専用の建物なども建築可 |
第1種住居地域 | 住居の環境を保護するため定める地域 【イメージ】住宅と小規模事務所や店舗が共存する |
第2種住居地域 | 主として住居の環境を保護するため定める地域 【イメージ】住宅と小規模事務所以外にもパチンコ店やカラオケボックスなどの遊戯施設も建築可 |
準住居地域 | 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域 【イメージ】幹線道路沿いでファミリーレストラン等と住宅が共存する地域 |
近隣商業地域 | 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 【イメージ】駅前の商店街等 |
商業地域 | 主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 【イメージ】駅前のビル街や繁華街 |
準工業地域 | 主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域 【イメージ】自動車修理工場など火災や公害発生など、危険や環境悪化のおそれの少ない工場と住宅が共存する地域 |
工業地域 | 主として工業の利便を増進するため定める地域 【イメージ】危険物の処理施設などの工場も建築可、住宅は建築できる |
工業専用地域 | 工業の利便を増進するため定める地域 【イメージ】臨海部の工業地帯 |
用途地域で定める都市計画
- 上記すべての用途地域について、それぞれ容積率を定める
- 商業地域以外の用途地域については、それぞれ建ぺい率を定める
※商業地域については、建築基準法で建ぺい率が8/10と決められているので、都市計画法では定めない - 第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域には、建築物の高さの限度を定める
用途地域を定めるものの、その用途地域内でも特定の地区ではうまくマッチしない地区も出てきます。そんな場合に、さらに別の地域地区を定めることができます。
特別用途地区
- 用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区をいう。
- 用途地域内で重ねて指定して、制限を付加したり緩和したりして、その地区独特の地区にしていく
- 用途の制限や緩和は地方公共団体の条例で定める
- 例えば、学校や図書館や博物館等の教育施設が多く集まっている地区として「文教地区」(特別用途地区の一つ)がある
特定用途制限地区
- 用途地域外かつ市街化調整区域外において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域
→用途地域の指定がないと何の制限もないので、建物が乱立する可能性があります。それを防ぐために特定用途制限地区を指定することで、一定の用途制限を加えるわけです。 - 用途の制限は地方公共団体の条例で定める
特例容積率適用地区
- 都心部などではもともと指定された容積率が比較的大きいですが、歴史的建造物があったりすると、使われない場合も多いです。その使われていない容積率を近隣の敷地に移転させることで、容積率を有効活用して、土地の高度利用(高い建物を建てる)を図るための区域
- 第1・2種中高層住居専用地域、第1・2種住居地域、、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域又は工業地域内で定めることができる
- 例えば、A(容積率200%)という敷地に建物がなくて、隣のB(容積率400%)という敷地にのみ建物を建てる場合、Aの容積率200%をBの敷地に移転させて、Bの土地の容積率を増やすことができる地区
高層住居誘導地区
- 住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するための地区
- 第1・2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域で指定できる
- 容積率制限、斜線制限が緩和され、日影規制が適用除外される→より大きなマンションを建築可
高度地区
- 用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区
- 用途地域内で定める
- 例えば、最高限度を定める高度地区では、日照や採光の確保、景観の維持・形成を目的とし、一方、最低限度を定める高度地区では、土地の高度利用による土地利用の増進(高い建物を積極的に建てること)を目的にしている。
高度利用地区
- 用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、一定の制限を定める地区
↓ わかりやすく言うと
小さな敷地が密集する地区についてまとめて指定することにより、小さな敷地を合体させ大きな敷地にして巨大で高層なビルを建てて、街を活性化させていくための地区 - 用途地域内で指定する
- 建築物の「容積率の最高限度及び最低限度」「建ぺい率の最高限度」「建築面積の最低限度」「壁面の位置」を定める
特定街区
- 高度地区や高度利用地区では、新宿等の超高層ビルは建てることができません。そこで、出てくるのが「特定街区」です。超高層ビルを作るための地区と考えてください
- 建築物の「容積率」「高さの最高限度」及び「壁面の位置」の制限を定める
- 特定街区内では、一般的な容積率、建ぺい率、高さ、斜線制限は適用されない(別途上記で定める)
防火地域・準防火地域
- 市街地における火災の危険を防除するため定める地域
- 具体的には建築基準法で定められている
風致地区
- 都市の風致(自然の風景などのもつおもむき)を維持するため定める地区
- 地方公共団体の条例で、建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採等の規制をする
臨港地区
- 港湾を管理運営するため定める地区