不動産鑑定評価基準
不動産の価格を鑑定評価する方法は3つあります。
- 原価法
- 収益還元法
- 取引事例比較法
鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用し、地域分析および個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきとしています。
それが困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌する(組み入れる)ように努めるべきとしています。
試算価格 | 鑑定により求めた不動産の価格をいう |
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価格時点 | 鑑定評価の基準となった日(いつの時点での鑑定評価をするか) |
正常な価格 | 市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。普通に取引した場合の価格といったイメージです。 |
最有効使用の原則 | 最有効使用とは、現実の社会情勢下で、客観的に見て良識と通常の使用能力を持つ人による合法的な最高最善の使用方法に基づくことをいう。不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に富む使用(=最有効使用)を前提として把握されている |
限定価格 | 借地権者による底地の併合や、隣接不動産の併合を目的とする売買など市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合または不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念下において形成されるであろう市場価格と乖離することにより市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいいます |
特定価格 | 市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう |
特殊価格 | 文化財や宗教建築物等、その保存に重点をおいて鑑定評価を行う場合などの市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいいます。 |
近隣地域 | 対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容を持つ地域である都市や農村等の内部にあり、居住、商業活動、工業生産活動等、人の生活と活動に関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいう |
類似地域 | 近隣地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つもの |
同一需給圏 | 一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。それは、近隣地域を含んでより広域的であり、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定するもの |
原価法
- 鑑定評価しようとする不動産を再度作るとしたらどれくらいのお金がかかるか(再調達原価)という観点から、鑑定評価する不動産の価格を求める方法
- 建物の場合、評価しようとする基準日(価格時点)に再度新築するために要する建築費用(再調達原価)を求め、そこから、建物の築年数分に応じて、価格を減らします(減価修正)。その結果、得られる価格が原価法で求められた試算価格という
- そして、原価法で求められた試算価格を「積算価格」と言う
- 土地については、造成地や埋立地等再調達原価が把握できる場合は、原価法を適用できる
- 減価修正の方法には、①耐用年数に基づく方法と②観察減価法の二つの方法があり、原則としてこれらを併用するものとされている
取引事例比較法
- 鑑定評価しようとする不動産を鑑定評価する場合、似たような不動産の取引事例とを比較して価格を求める方法
- 取引事例比較法で求める試算価格を「比準価格」という
取引事例の要件
取引事例は、原則として近隣地域または同一需給圏内の類似地域に存する不動産にかかるもののうちから選択する 例外として、必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に存する不動産に係るものから選択する |
取引事例等は、鑑定評価の各手法に即応し、適切にして合理的な計画に基づき、豊富に秩序正しく収集し、選択すべきであり、投機的取引であると認められる事例等適正さを欠くものは選んではいけない |
対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等には、同一需給圏内の代替競争不動産に係るもののうちから選択するものとする |
取引事例等に係る取引等の事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること |
時点修正をすることが可能なものであること。 |
地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること。 |
※わかりづらい部分もあると思いますが、わかりやすい解説は「独学合格プログラム」で解説しています!
収益還元法
- 収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法
- 収益還元法で求める試算価格を「収益価格」という
- 収益還元法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべき
- 自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。
- 市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときはこの手法が活用されるべき
- 収益価格を求める方法には、「直接還元法」と、「DCF法」の2種類がある
直接還元法
一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法が「直接還元法」です。
直接還元法による収益価格=(純収益)÷(還元利回り)
で計算できます。
例えば、鑑定評価しようとしている不動産を賃貸した場合の年間収入が120万円で、管理費や固定資産税等、火災保険料等の経費が20万円だとすると、純収益は100万円です。還元利回りは、投資利回りを指し、投資対象としての危険性や安全性等を総合的に判断して求めるのですが、仮に5%(0.05)とします。
すると、
100万円÷0.05=2000万円
DCF法
- 連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法
- 証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならない
例えば、投資期間を10年とし、年間収入が120万円で、管理費や固定資産税等、火災保険料等の経費が20万円だとすると、純収益は100万円です。10年後に1500万円(復帰価格)で売却できると仮定します。現在価値とは、例えば、今100万円を銀行に預けると、10年後には、利息がつくので、100万円より多くなっているはずです。つまり、10年後の年間収入100万円を基準にしたら、現在の価値では100万円より少ないわけです。これを「現在価値に割り引く」ということです。つまり、10年間の純収益を現在価値に割り引くと、単純に120万円×10年分=1200万円とできないわけです。「1180万円」といった感じで少し少なくなるわけです。また、10年後に1500万円で売却したとしても、現在価値で言えば、「1420万円」というように少し少なくなります。
つまり、DCF法により上記対象不動産を計算すると
1180万円+1420万円=2600万円
不動産の価格を形成する要因(価格形成要因)
- 不動産の価格を形成する要因(価格形成要因)とは、不動産の「効用」及び「相対的稀少性」並びに不動産に対する「有効需要」の三つに影響を与える要因 をいう
- 価格形成要因は、一般的要因、地域要因及び個別的要因に分けられる
一般的要因 | 自然的要因(気象条件・土壌・地勢・地質)、社会的要因(人口や世帯の状態、不動産の取引慣行、生活様式、公共施設)、経済的要因(GDPや物価水準・財政や金融・税負担の状態)、行政的要因(土地利用に関する計画や法規制・住宅政策・税制) |
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地域要因 | 用途的に同質と考えられる地域(用途的地域)における、不動産の価格形成に影響を与える要因を言います。 用途的地域は、「宅地地域」「農地地域」「林地地域」などに大別され、その中で「宅地地域」は、さらに「住宅地域」「商業地域」「工業地域」などに分けられる |
個別的要因 | 不動産の価格について、その属する用途的地域における標準的使用を前提とする不動産の価格水準と比較し、個別的な価格を形成する要因を言い、宅地であれば「角地」の場合は増価要因。袋地、無道路地、セットバックの場合は減価要因となる |