独学合格プログラム

令和7年(2025年)問8|共有

A、B及びCがそれぞれ3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、甲土地を分割しない旨の契約は存在しないものとする。

1.甲土地につき無権利のDが、自己への虚偽の所有権移転登記をした場合には、Aは、単独で、Dに対し、その所有権移転登記の抹消を求めることができる。

2.Aが甲土地についての自己の持分を放棄した場合には、その持分は国庫に帰属する。

3.Aが死亡し、E及びFが相続した場合には、B及びCは、Aの遺産についての遺産分割がされる前であっても、E及びFに対して共有物分割の訴えを提起することができる。

4.AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合であっても、Bは、Aに対し、当然には自己に甲土地を明け渡すように求めることができない。


【答え:2】


1.A、B及びCがそれぞれ3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合にについて、甲土地につき無権利のDが、自己への虚偽の所有権移転登記をした場合には、Aは、単独で、Dに対し、その所有権移転登記の抹消を求めることができる。

1・・・ 正しい

共有物の管理については、その内容の重さに応じて、以下の3つのルールに分かれています。

共有物の「保存・管理・変更」行為の比較
行為の種類 具体的な内容の例 必要な同意(決定権)
保存行為 ・腐った柱の修繕
・無権利者への返還請求・登記抹消請求
各共有者が単独でできる
管理行為 ・賃貸借契約の解除
・利用方法の決定(短期賃貸借など)
各共有者の持分の過半数で決定
変更行為
(処分行為含む)
・建物の取り壊し
・共有物全体の売却・抵当権設定
・大規模な改築
共有者全員の同意が必要

今回のケースでは、全く無関係なDが勝手に自分の名前で登記をしてしまっています。これはA・B・C全員にとって「自分の持ち物が勝手に他人のものだと言い張られている」非常に迷惑な状態です。

そのため、無権利者に対する登記抹消請求や返還請求は「保存行為」として扱うため、他の共有者の同意不要で「単独で」できます。


2.A、B及びCがそれぞれ3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合にについて、Aが甲土地についての自己の持分を放棄した場合には、その持分は国庫に帰属する。

2・・・ 誤り

共有者の1人が持分を放棄した場合、その持分は「国庫」ではなく、「他の共有者」にその持分に応じて帰属します。

この論点は、以下の2つのケースについては、、「他の共有者」にその持分に応じて帰属するのでセットで覚えておくのがコツです。

  • 持分の放棄: Aが「自分の持分はいらない」と意思表示した場合。
  • 相続人の不存在: Aが死亡し、本来引き継ぐべき相続人が一人もいない場合。

■なぜ、国庫ではないのか?

端的にいうと、共有持分は「ひとりだけの持ち主がいない財産」なので、誰かが抜けた分は他の共有者の持分を厚くする形で埋める、という考え方だからです。

つまり、国庫に入れるよりも、その財産を現に共有している人たちに戻すほうが、共有関係のルールとして自然だとされているんです。


3.A、B及びCがそれぞれ3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合にについて、Aが死亡し、E及びFが相続した場合には、B及びCは、Aの遺産についての遺産分割がされる前であっても、E及びFに対して共有物分割の訴えを提起することができる。

3・・・ 正しい

B及びCは、遺産分割前であっても、相続人E及びFに対して共有物分割の訴えを提起することができます。

まず、問題文の状況を整理しましょう。

  • もともとの共有関係: A・B・C(各1/3)
  • 現在の状況: Aが死亡し、Aの持分1/3をEとFが相続(遺産分割前)。
  • 請求者: B・C(外部の共有者)
  • 相手方: E・F(相続人)

ここで重要なのは、「B・Cは、Aの家庭事情(遺産分割)とは無関係な第三者である」ということです。

もし「遺産分割が終わるまで待て」と法律が強制してしまうと、BやCは、いつ終わるとも知れないA家の遺産争いに巻き込まれ、自分の所有権(持分)を自由に処分したり整理したりできなくなってしまいます。これはB・Cにとって酷な話ですよね。

そのため、判例(最高裁昭47.11.9)では、「他の共有者(B・C)から、相続人(E・F)に対して共有物分割を請求することは、遺産分割前であっても妨げられない」としています。

よって、B及びCは、Aの遺産についての遺産分割がされる前であっても、E及びFに対して共有物分割の訴えを提起することができます。


4.A、B及びCがそれぞれ3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合にについて、AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合であっても、Bは、Aに対し、当然には自己に甲土地を明け渡すように求めることができない。

4・・・ 正しい

各共有者は、自分の持分がたとえ「3分の1」といった一部分であっても、共有物の「全部」について、その持分に応じた使用をすることができます。

判例(最判昭41.5.19)でも
共有者の一人が占有している場合、他の共有者は、当然には明渡しを求めることはできない。」としています。

そのため、AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合であっても、Bは、Aに対し、当然には自己に甲土地を明け渡すように求めることができません。

理解ポイント

各共有者は、自分の持分が3分の1であっても、「共有物の全部」について、その持分に応じた使用をする権利を持ちます(民法249条の趣旨)。

したがって、AもBもCも、本来は甲土地全体を利用できる立場にあり、「誰かだけが全部を独占する」ことは原則として正当化されません。

この「共有物の全部につき使用できるが、あくまで持分に応じた範囲」というイメージは必須です。

なぜ「当然には」明渡請求できないのか

判例(最判昭41.5.19)は、次のような考え方をとっています(趣旨)。

共有者の一人が共有物を占有している場合、他の共有者はその者に対し「共有物の明渡し」を当然に求めることはできません。

なぜなら、その占有は自己の持分に基づく占有とも評価でき、直ちに「不法占有」とは言えないからです。

この判例理論が、そのまま今回の肢に使われています。
Aの占有は、少なくとも自分の持分3分の1については正当な占有であり、Bが「全部を自分に明け渡せ」とまでは、当然には請求できない、ということです。

「当然には」の意味合い

「当然には…できない」という表現には、次のニュアンスがあります。

自動的に、ストレートに、無条件でその請求を認めることはできません。

しかし、「一切不可能」という意味ではなく、例えば

共有物分割の請求をして、自分の単独所有部分を確保したうえでその部分の明渡しを求める、

共有者間で使用方法に関する合意(使用収益の調整)をし、それに反する占有に対して是正を求める、
といったルートはあり得るという含みを残しています。

つまり、「共有者であるAの占有を、即座に不法占有とみなして全面明渡しを請求することはできない」という制限を言っていると理解してください。


令和7年(2025年):宅建試験・過去問

問1
意思表示・物権変動
問2
保証・連帯保証
問3
意思表示
問4
担保物権・相殺
問5
相続(代襲相続)
問6
物権変動
問7
民法総合
問8
共有
問9
連帯債務
問10
契約不適合責任
問11
借地権
問12
借家権
問13
区分所有法
問14
不動産登記法
問15
都市計画法
問16
都市計画法(開発許可)
問17
建築基準法
問18
建築基準法
問19
盛土規制法
問20
土地区画整理法
問21
農地法
問22
国土利用計画法
問23
登録免許税
問24
固定資産税
問25
不動産鑑定評価基準
問26
報酬計算
問27
重要事項説明・35条書面
問28
業務上の規制
問29
37条書面
問30
重要事項説明・35条書面
問31
業務上の規制
問32
8種制限
問33
35条書面・37条書面
問34
免許の基準
問35
保証協会
問36
重要事項説明
問37
業務上の規制
問38
免許
問39
媒介契約
問40
クーリングオフ
問41
免許
問42
宅建士
問43
重要事項説明書・35条書面
問44
犯罪収益移転防止法
問45
住宅瑕疵担保履行法
問46
住宅金融支援機構
問47
不当景品類及び不当表示防止法
問48
統計
問49
土地
問50
建物

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