令和7年(2025年)問9|連帯債務
連帯債務者の一人について生じた次の事由のうち、民法の規定によれば、他の連帯債務者に対して効力が生じないものとして正しいものはどれか。なお、この問において、連帯債務者の一人について生じた事由が他の連帯債務者に対して効力が生じる旨の別段の意思表示はないものとする。
1.債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求
2.連帯債務者の一人と債権者との間の混同
3.連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用
4.連帯債務者の一人と債権者との間の更改
【答え:1】
1・・・ 正しい
現在の民法では、連帯債務者の一人に対して「お金を払ってください」と請求(履行の請求)をしても、その効果は他の債務者には及びません。
これを専門用語で「相対効(そうたいこう)」と呼びます。
例えば、AさんがBさんとCさんの二人に300万円を貸しており(連帯債務)、AさんがBさんだけに「返せ!」と裁判を起こしたとします。
- Bさんに対して: 時効の完成猶予(ストップ)などの効果が生じます。
- Cさんに対して: 何も起きません。 Cさんの時効はそのまま進みます。
| 項目 | 内容 | 覚え方のコツ |
|---|---|---|
| ① 弁済(代物弁済・供託) | 一人の弁済で、全員の債務が消滅する。 | 当たり前!(お金が返ってきたら債権者は満足) |
| ② 相殺 | 一人の債権で相殺すると、全員の債務が消滅する。 | 損をしないからOK!(実質的に弁済と同じ) |
| ③ 更改 | 一人が旧債務に代えて新債務を結ぶと、全員の旧債務が消滅する。 | 全く別物になるから!(契約のやり直し) |
| ④ 混同 | 一人について債権者と債務者が同一人になると、全員の債務が消滅する。 | 合体するから!(自分に返す必要はない) |
※上記4つ以外(例:履行の請求、時効の完成、免除など)は原則として相対効となります。
2・・・ 誤り
混同(こんどう)とは、例えば「債権者が亡くなり、連帯債務者の一人がその地位を相続した」というように、債権者と債務者が同一人物になることを指します。
この場合、その債務者の債務は消滅しますが、この効果は他の連帯債務者にも及びます。
混同のイメージ
混同とは、債権とその債務が同一人に帰属することで、債権が消滅することです。
「自分に対して自分が請求する」状態はナンセンスなので、弁済と同様に扱って消す、というイメージです。
典型例(相続)
連帯債務者A・B・Cが、債権者Xに対して各900万円の連帯債務を負っている(Xは総額900万円の請求権を持つ)。
Xが死亡し、連帯債務者の一人AがXを単独相続したとする。
このとき
Aの立場:
債務者Aとして「Xに対する900万円の債務」がある。
相続により、債権者Xの地位=「A・B・Cに対する900万円の債権」を取得する。
この結果、「Aに対する債権」と「Aの債務」が同一人Aに帰属し、Aについて混同が生じる。
混同により
AのXに対する900万円の債務は消滅する(Aは弁済したものとみなされる)。
この混同は絶対効なので、他の連帯債務者B・Cについても、連帯債務は全体として消滅する方向で処理されます。
混同は絶対効
混同が「弁済と同じ効果」を持つ以上、連帯債務全体が消滅するのが原則です。
そのため、
債権者X(を相続したA)は、B・Cに対して、もはや元の連帯債務に基づいて請求することはできません(債務が消滅しているから)。
結果として、B・Cの債務負担は軽減または消滅することになります。
3・・・ 誤り
連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権(相殺できる権利)を持っており、実際に「相殺を援用(実行)」した場合、その効力は他の連帯債務者にも及びます。
つまり、相殺の援用は絶対効です。
具体例①:3,000万円の連帯債務と1,000万円の反対債権
例えば、
債権者:X
連帯債務者:A・B・C
債務:合計3,000万円(XはA・B・Cの誰に対しても3,000万円を請求できる)
連帯債務の内部負担は、A・B・C各1,000万円ずつとする(典型)。
ここで、
AはXに対して1,000万円の貸金債権を持っている(反対債権)。
Aが「この1,000万円と、自分たちの3,000万円の債務を相殺します」と、相殺を援用する。
この場合、相殺により、Xの持つ債権は1,000万円分消滅し、残り2,000万円となる。
この「1,000万円分の債権減少」は、すべての連帯債務者の利益のために生じるので、A・B・Cが連帯して負う債務総額は3,000万円→2,000万円になる。
したがって、
A・B・Cは「連帯して2,000万円の債務」を負う状態になる。
「Aだけが減って他は3,000万円のまま」ではない点がポイント。
つまり、「Aの相殺=Aだけの問題」ではなく、「連帯債務全体を1,000万円減らす効果」があるので、B・Cにも効力が及ぶ(絶対効)と理解します。
具体例②:相殺を援用しない間の“履行拒絶”
条文はもう1つ大事なルールも置いています。
「債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度で、他の連帯債務者は債権者に対して履行を拒むことができる。」
これも具体例にするとイメージしやすいです。
前提は上記同じです。
Xに対してA・B・Cが3,000万円連帯債務(内部負担は各1,000万円)。
AはXに対して1,000万円の反対債権を持っている。
ただし、Aはまだ相殺を援用していない状況を想定。
このとき、
債権者XがBに対して「3,000万円払え」と請求してきた場合、Bは
「AはXに対して1,000万円の債権を持っているので、本来なら相殺できる。その1,000万円の負担部分の限度では、自分(B)は履行義務を拒める」
と主張できます。
つまり、Bは、「少なくとも1,000万円分については払わなくてよい」と抵抗できます。
これは、Aが“相殺を使える立場にあること”を前提に、Bがその利益を受けられるように調整した規定といえます。
4・・・ 誤り
「更改(こうかい)」とは、簡単に言うと「古い契約を捨てて、新しい内容の契約を結び直すこと」です。
例えば、「100万円を返す」という債務を、「代わりにダイヤモンドを渡す」という債務に変更する場合が更改に当たります。
そして、「更改」は絶対的効力(絶対効)を持ちます。 したがって、「他の連帯債務者に対しても効力が生じる」ので正しいです。
具体例
例えば、
債権者:X
連帯債務者:A・B
債務:Xに対して連帯して100万円を支払う。
内部負担は、A=50万円、B=50万円とする(典型)。
ここで、XとAの間で更改が行われるケースを想定します。
■ステップ1:更改の合意
XとAが、次のように合意します。
「これまでの“100万円の金銭債務”をやめて、代わりに“AがXにダイヤを渡す債務”に切り替えよう。」
これは、「旧債務(連帯債務としての100万円)を消して、新しい債務(A単独のダイヤ引渡債務)に切り替える」=更改です。
■ステップ2:連帯債務への影響
更改は絶対効なので、Aだけでなく連帯債務全体に影響します。
旧債務(X対A・Bの100万円の連帯債務)は消滅。
→ Xはもう「A・Bに対して100万円払え」とは言えない。
代わりに、新債務(X対Aのダイヤ引渡債務)だけが残る。
→ Xは「A、約束どおりダイヤを渡して」と言える。
このとき、Bの立場はこうなります。
Bは、もはやXに対して直接の債務を負っていない(旧連帯債務が消えているため)。
ただし、内部関係として、AとBの負担部分がどう処理されるかが問題になります(求償関係)。
■内部関係(ざっくり)
内部負担を「A=50万円、B=50万円」としていたときに、AがXとの更改により新しく「ダイヤ引渡債務」を負った場合、
実質的に「旧100万円分の債務を、Aが新しい形で引き受けた」ような構造になります。
このため、Aは自分の負担部分(50万円相当)を超えて他人の分まで負っていることにもなり得るので、場合によってはBに対して「自分の負担分を超えた部分を求償できるか」が問題になります。
令和7年(2025年):宅建試験・過去問
- 問1
- 意思表示・物権変動
- 問2
- 保証・連帯保証
- 問3
- 意思表示
- 問4
- 担保物権・相殺
- 問5
- 相続(代襲相続)
- 問6
- 物権変動
- 問7
- 民法総合
- 問8
- 共有
- 問9
- 連帯債務
- 問10
- 契約不適合責任
- 問11
- 借地権
- 問12
- 借家権
- 問13
- 区分所有法
- 問14
- 不動産登記法
- 問15
- 都市計画法
- 問16
- 都市計画法(開発許可)
- 問17
- 建築基準法
- 問18
- 建築基準法
- 問19
- 盛土規制法
- 問20
- 土地区画整理法
- 問21
- 農地法
- 問22
- 国土利用計画法
- 問23
- 登録免許税
- 問24
- 固定資産税
- 問25
- 不動産鑑定評価基準
- 問26
- 報酬計算
- 問27
- 重要事項説明・35条書面
- 問28
- 業務上の規制
- 問29
- 37条書面
- 問30
- 重要事項説明・35条書面
- 問31
- 業務上の規制
- 問32
- 8種制限
- 問33
- 35条書面・37条書面
- 問34
- 免許の基準
- 問35
- 保証協会
- 問36
- 重要事項説明
- 問37
- 業務上の規制
- 問38
- 免許
- 問39
- 媒介契約
- 問40
- クーリングオフ
- 問41
- 免許
- 問42
- 宅建士
- 問43
- 重要事項説明書・35条書面
- 問44
- 犯罪収益移転防止法
- 問45
- 住宅瑕疵担保履行法
- 問46
- 住宅金融支援機構
- 問47
- 不当景品類及び不当表示防止法
- 問48
- 統計
- 問49
- 土地
- 問50
- 建物