都市施設と市街地開発事業
目次
都市施設とは?
イメージとしては、インフラや公共施設、生活する上で必要な施設です。具体的には下記があります。
- 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナル等の交通施設
- 公園、緑地、広場、墓園等の公共空地
- 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場等
- 河川、運河等の水路
- 学校、図書館、研究施設等の教育文化施設
- 病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
- 市場、と畜場又は火葬場
- 一団地の住宅施設、一団地の官公庁施設、流通業務団地
等
都市計画では、上記と施設で必要なものの種類・名称・区域・位置等を定めます。ここで定めた計画を「都市施設に関する都市計画」といいます。また、都市計画で定められた都市施設を「都市計画施設」と言います。
都市施設を定める場所
- 原則、都市施設は都市計画区域内に定めます。しかし、特に必要がある場合については、都市計画区域外でも都市施設を定めることができます。
- 道路・公園・下水道については、市街化区域と非線引都市計画区域で必ず定める
- 義務教育施設(小学校や中学校)は低層住居専用地域・中高層住居専用地域・住居地域及び準住居地域(住居系の用途地域)で必ず定める
市街地開発事業とは?
市街地開発事業とは、地方公共団体等が行う総合的な(大規模な)開発というイメージです。
そして、市街地開発事業等については、同じ区域であっても、計画の進み具合に応じて、その区域の名称が、「市街地開発事業等予定区域」「都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域」「事業地」と変わっていきます。そして、その進み具合(名称)に応じて、制限も変わってきます。
市街地開発事業の種類
市街地開発事業は下記7種類ありますが、試験でよく出題されるのは「土地区画整理事業」と「市街地再発事業」でしょう。
- 土地区画整理事業
- 新住宅市街地開発事業
- 工業団地造成事業
- 市街地再開発事業
- 新都市基盤整備事業
- 住宅街区整備事業
- 防災街区整備事業
市街地開発事業が行われる場所
市街地開発事業は、都市計画区域内の市街化区域もしくは非線引都市計画区域で定めることができます。市街化調整区域や準都市計画区域計画では定めることができません。
市街地開発事業等予定区域
3年以内に「市街地開発事業に関する都市計画」または「都市施設に関する都市計画」が決定される区域を言います。簡単にいったら、まだ決定はしていないけど、将来的に決定する区域です。
そのためには、予定区域内では①建築などの制限も必要ですし、②用地の取得も必要です。
市街地開発事業等予定区域内の制限
知事の許可が必要な行為(原則) |
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知事の許可が不要な行為(例外) |
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土地建物等の先買い(用地の取得方法①)
譲渡予定者からの届出に対して、施行予定者が土地を取得する方法
- 市街地開発事業等予定区域に指定されると、将来的には、強制的に買収されてしまいます。
- そのため、土地建物等の有償で譲渡しようとする者は、事前に施行予定者(国・都道府県・市町村等)に届出をしなければなりません。
- そして、施行予定者は、この届出のあった土地建物等を優先的に買い取ることができます。
- 施行予定者が買い取る場合、届出があった日から30日以内に買い取る旨の通知をする
- 上記通知をしたときは、届出書に記載された予定対価の額で売買が成立したものとみなされる
土地の買取請求(用地の取得方法②)
土地所有者からの請求に対して、施行予定者が土地を取得する方法
- 市街地開発事業等予定区域内の土地所有者は、施行予定者(国・都道府県・市町村等)に対して、土地を時価で買い取るべきことを、請求できる。
- 例外1:その土地に建築物・工作物・立木法により登記された立木がある場合には、この買取請求ができない
- 例外2:その土地に他人の権利(地上権・賃借権・抵当権など)が設定されている場合にも、この買取請求ができない
都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域
市街地開発事業等予定区域では、まだ、都市計画の決定がされていない状況でしたが、ここからは都市計画が決定した後の話になります。具体的には「都市施設の都市計画」または「市街地開発事業の都市計画」が決定されてから、事業の認可の告示があるまでの話です。
- 「都市施設の都市計画」が決定されてから事業認可の告示があるまでの間は、その区域を「都市計画施設の区域」と呼ぶ
- 「市街地開発事業の都市計画」が決定されてから事業認可の告示があるまでの間は、その区域を「市街地開発事業の施行区域」と呼ぶ
都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域の制限
知事の許可が必要な行為(原則) | 建築物の建築行為(新築・増築・改築または移転) |
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知事の許可が不要な行為(例外) |
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許可の基準
上記のとおり、都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内で建築物の建築を行う場合、知事の許可が必要ですが、下記内容に当てはまる場合は、許可をしなければなりません。
- 都市計画に適合する建築物である場合
- 階数が2以下で地階がない木造・鉄骨造等で、かつ、容易に移転または除却することができるもの
事業地
「都市施設の都市計画」または「市街地開発事業の都市計画」について事業の認可又は承認の告示があると、これまで「都市計画施設の区域」や「市街地開発事業の施行区域」と呼ばれていた区域が「事業地」と呼ぶようになる
事業地内の制限
知事の許可が必要な行為(原則) |
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知事の許可が不要な行為(例外) | なし |
土地建物等の先買い(用地の取得方法①)→予定区域の場合とほぼ同じ
譲渡予定者からの届出に対して、施行予定者が土地を取得する方法
- 事業の認可の告示後も、引き続き買収は続けられます。
- そのため、土地建物等の有償で譲渡しようとする者は、事前に施行者(国・都道府県・市町村等)に届出をしなければなりません。
- そして、施行者は、この届出のあった土地建物等を優先的に買い取ることができます。
- 施行者が買い取る場合、届出があった日から30日以内に買い取る旨の通知をする
- 上記通知をしたときは、届出書に記載された予定対価の額で売買が成立したものとみなされる
土地の買取請求(用地の取得方法②)→予定区域の場合とほぼ同じ
土地所有者からの請求に対して、施行予定者が土地を取得する方法
- 土地収用の手続が保留されている事業地内の土地所有者は、施行予定者(国・都道府県・市町村等)に対して、土地を時価で買い取るべきことを、請求できる。
- 例外1:その土地に建築物・工作物・立木法により登記された立木がある場合には、この買取請求ができない
- 例外2:その土地に他人の権利(地上権・賃借権・抵当権など)が設定されている場合にも、この買取請求ができない
都市計画事業と土地収用法の関係
都市計画事業については、認可されれば、土地収用法の事業認定の告示もあったものとみなされます。