開発許可
目次
開発許可は、「土地の造成」についての制限で、乱開発による無秩序な市街化を防止するため制限です。どんな制限かというと、「開発行為を行う場合、原則、都道府県知事の許可を受けなければならない」という制限です。どのような場合に開発許可が必要で、どのような場合に開発許可が不要なのか?この点は試験によく出題される部分なので、一つ一つ言葉の意味を確認してきます。
開発行為とは?
開発行為とは、主として「建築物の建築」または「特定工作物の建設」の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいいます。簡単に言えば、建物を建てるための土地の造成工事(盛土や切土)のことです。
【注意点】
建物を建てる目的がない場合の土地の区画形質の変更行為、例えば、青空駐車場を作るための造成工事はそもそも開発行為に該当しないので、開発許可は不要です(開発許可の対象外)。
特定工作物とは?
第一種特定工作物 | コンクリート・プラントやアスファルト・プラント等の周辺の環境悪化をもたらす恐れがある工作物 |
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第二種特定工作物 |
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【注意点】
- 8000㎡のゴルフ場建設目的の造成工事→開発行為に該当する
- 8000㎡の陸上競技場建設目的の造成工事→開発行為に該当しない
開発許可の要否
原則 | 開発行為をしようとする者は、都道府県知事(指定都市等の場合は市長)の許可が必要 |
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例外 | 下記2つのいずれかに該当する場合は、都道府県知事の許可は不要
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例外1:小規模開発の場合(一定面積未満の開発行為の場合)
小規模開発については、区域によって、どのくらいの大きさが許可不要となる「小規模」に当たるかが変わってきます。そのため細かく覚えておきましょう。
市街化区域 | 1,000㎡未満大都市圏では500㎡、条例で300㎡まで制限を厳しくできる |
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市街化調整区域 | 面積が小さくても、原則、開発許可が必要 |
非線引都市計画区域 準都市計画区域 |
3,000㎡未満 |
都市計画区域外かつ準都市計画区域外 (上記以外の区域) |
1ha(10,000㎡)未満 |
【具体例】
- 市街化区域内で住宅建築のために200㎡の土地の区画形質の変更をする場合、開発許可は不要
- 市街化調整区域内で住宅建築のために500㎡の土地の区画形質の変更をする場合、開発許可が必要
- 区域区分の定めない区域(非線引都市計画区域)内でマンション建築のために4,000㎡の土地の区画形質の変更をする場合、開発許可は必要
- 都市計画区域及び準都市計画区域計画区域外で庭球場(テニスコート)建設のために12,000㎡の土地の区画形質の変更をする場合、開発許可が必要
例2:その他例外に該当する場合
小規模開発以外の場合でも、下記に該当する場合は開発許可は不要となります。
農林漁業用建築物・農林漁業者用の住宅(市街化区域以外に限る)
- 農林漁業用建築物とは、畜舎(家畜を育てる建物)、堆肥舎(肥料を保管する建物)、サイロ(家畜の飼料を保管する倉庫)など
- 農林漁業者用の住宅とは、農業や林業、漁業をしている者のマイホーム
- 市街化区域以外の区域で「農林漁業用建築物や農林漁業者用の住宅」を建築するための開発行為をする場合、許可不要となる
【注意点】
市街化区域内で、「農林漁業用建築物や農林漁業者用の住宅」を建築するための開発行為をする場合は、上記例外に当てはまらず、原則、開発許可が必要です。
公益的な建築物
駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所等の公益上必要な建築物の建築のように供する目的で行う開発行為は開発許可不要です。
【注意点】
学校(小・中・高等学校)、医療施設、社会福祉施設などは、例外にはならず、公益目的であっても、原則として許可が必要です。
~事業の施行として行う開発行為の場合
下記開発行為は、全て開発許可不要です。
- 都市計画事業の施行として行う開発行為
- 土地区画整理事業の施行として行う開発行為
- 市街地再開発事業の施行として行う開発行為
- 住宅街区整備事業の施行として行う開発行為
- 防災街区整備事業の施行として行う開発行為
上記以外でも開発許可不要となる場合
- 公有水面埋立法による免許を受けた埋立地のうち、竣工認可の告示がないものにおいて行う開発行為
- 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
- 通常の管理行為、軽易な行為等
開発許可の特例(国等の特例)
国・都道府県等が行う開発行為については、当該国の機関又は都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、開発許可があつたものとみなす。
【注意点】
市町村が行う開発行為については、上記特例はないので、原則、開発許可が必要です。
開発許可の手続き
開発許可の手続きの流れは大きく分けると上記のとおりです。一つ一つ解説しています。
①開発許可の申請
開発許可を申請しようとする者は、事前に下記3つを行う必要があります。
- 開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない
- 開発行為又は開発行為に関する工事により新たに公共施設が設置される公共施設を管理予定者と協議しなければならない
→公共施設とは、道路、水路、公園、緑地、広場、下水道等 - 開発許可に関係する区域内の土地所有者等の相当数の同意を得なければならない
→全員の同意がなくても、許可されることもある
開発許可を受けるためには、「申請書」を都道府県知事に提出しなければなりません。この申請書には下記内容を記載します。
- 開発区域の位置、区域及び規模
- 開発区域内において予定される建築物又は特定工作物の用途(予定建築物の用途)
- 開発行為に関する設計(1ha以上の開発行為の場合、建築士等の有資格者が作成したものでなければならない)
- 工事施行者
※、上記申請書に併せて、「公共施設管理者の同意書」と「公共施設の管理予定者との協議書」、「土地所有者等の相当数の同意書」
②開発許可の審査
都道府県知事は開発許可の申請があると、一定の基準に基づいて審査を行います。その審査については、「自己居住用のための開発行為」と「業務用の開発行為(分譲開発用)」とは審査基準が異なってくるのでその点を注意しましょう!
また、市街化を抑制する目的の市街化調整区域においては、さらに追加で審査基準が設けられています。
「自己居住用のための開発行為」「業務用の開発行為(分譲開発用)」共通の審査基準
- 用途地域等が定められている場合、予定建築物の用途がその用途地域の制限に適用していること
- 排水施設が適当に配置されていること
- 開発許可に関係する区域内の土地所有者等につい相当数の同意を得ていること
「業務用の開発行為(分譲開発用)」のみの審査基準
- 道路・公園等の公共用空地(空き地)が環境保全上、災害防止上、通行安全上、適当に配置されていること
- 開発区域内の道路が開発区域外の相当規模の道路に接続するように設計されていること(道路の接続)
- 給水施設が適当に配置されていること
- 申請者に必要な資力・信用があること
- 工事施工者に、当該開発行為を完成させる能力があること
市街化調整区域の基準
市街化調整区域は、もともと市街化を抑制するための区域なので、できるだけ開発許可をしたくない区域です。ただし、どうしても開発行為を認めないといけない場合は、仕方がないので許可します。ここには細かい基準は記載しませんが、ある基準のどれか一つでも該当すると、都道府県知事は許可をすることができます。ただし、これは任意なので、絶対に許可しなければならないわけではない。
用途地域の指定がない場合に定めた建築制限
用途地域の定めがない地域については、建築行為に関する制限が定まっていないので、開発許可をする段階で、都道府県知事は必要があると認めた場合に、「建ぺい率」「建築物の高さ」「壁面の位置」「敷地・構造・設備」に関する制限を定めることができます。
③開発許可・不許可の処分(不服申し立て等も含む)
- 開発許可の申請を受けた場合、都道府県知事は遅滞なく「許可」するのか「不許可」にするのかの処分をしなければならない
- 上記「許可」「不許可」の処分は「文書」で申請者に通知しなければならない
- 許可をする際に、必要な制限を加えることができる
- 不許可処分に対して不服があるものは、①開発審査会に対して審査請求、もしくは、②裁判所に対し、処分取り消しの訴えを裁判所に提起できる。
- 開発許可があったら、都道府県知事は、開発許可の内容を開発登録簿に記載し、公開しなければならない
開発登録簿の記載内容 - 開発許可の年月日
- 予定建築物等(用途地域等の区域内の建築物及び第一種特定工作物を除く。)の用途
- 公共施設の種類、位置及び区域
- 前三号に掲げるもののほか、開発許可の内容
- 用途地域の指定がない場合に定めた建築制限の内容(②開発許可の審査参照)
④開発工事着工
開発許可をもらったら、実際に造成工事に入っていきます。そして、開発許可を受けた者が開発区域の位置等を変更する場合どうするか?
変更の許可
変更の許可が必要な場合 |
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届出で足りる場合(許可は不要) | 軽微な変更の場合は、届出で足りる
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許可に戻づく地位の承継
- 一般承継(相続)による変更→当然に承継される
- 特定承継(地位の譲渡等)による変更→承継には都道府県知事の承認が必要
開発工事の廃止
開発許可を受けたが、工事をやめることとなった場合、遅滞なく、都道府県知事に届出をすれば足ります。許可は不要です。
⑤開発工事完了および公告
- 工事が完了したら、開発許可を受けた者が、その旨を都道府県知事に届け出る
- 都道府県知事は、開発許可の内容に適合しているか検査する
- 適合していると認めたときは、都道府県知事は、検査済み証を、開発許可を受けた者に交付する
- 検査済み証を交付したら、都道府県知事は遅滞なく、工事が完了した旨を公告する
開発行為により設置された公共施設の管理
公共施設の管理 | 公共施設は、工事完了公告の日の翌日以後、
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敷地の帰属 | 公共施設の敷地は、工事完了公告の日の翌日以後、
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開発区域内の建築制限
開発許可を受けると、その後、開発許可を受けた区域内(開発区域内)について自由に土地を利用することができなくなります。具体的には、建築物の建築ができなくなったりといった制限を受けます。この制限については、工事完了公告前と公告後では制限が異なってくるので、その違いについて、表でまとめました。
工事完了公告前とは、工事中なので、土地の上に建物を建てるな!ということです。
工事完了公告後は、開発許可してもらった用途の建物以外は原則建てるな!ということです。ただし、用途地域が定まっているのであれば、用途制限の範囲ないであれば、予定していた建物ではない建物でも建築していいよ!ということです。
工事完了公告前 | 工事完了公告後 | |
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原則 | 建築物の建築・特定工作物の建設は禁止 | 予定建築物以外の建築の禁止予定建築物以外の建築物への用途変更禁止 |
例外 | 下記場合は、例外的に建築することができる
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下記場合は、例外的に建築することができる
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開発区域以外の区域における建築制限
開発許可は、そもそも宅地造成を行う場合に必要なもので、宅地造成工事を行わないのであれば、開発許可は不要です。ただし、開発許可を受ける必要のない場合でも、一定の建築制限をしたほうがいい場合もあるので、今から解説する制限があるわけです。具体的には、「市街化区域内」と「市街化調整区域内」の2つに分けて解説します。
市街化区域内の建築制限
建築基準法により、用途地域別で、建築できる建物とできない建物が決められています(「用途制限」という)。それに従います。
市街化調整区域内の建築制限
これは、「市街化調整区域内にある、開発区域の指定を受けていない区域」の建築制限です。つまり、普通の市街化調整区域の制限です。試験では「市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域」という紛らわしい言葉で出題されますが、この部分の話です。
市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域 | |
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原則 | 知事の許可を受けなければ、新築・改築・用途変更はできない |
例外 | 下記建築行為は例外として許可なく建築できる(ほぼ開発許可の例外と同じと考えて良い)
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