業務上の規制
業務処理の原則(信義誠実の原則)
民法においても規定されている「信義誠実の原則」ですが、これは簡単に言えば、「誠実に取引をしなさい。裏切り行為をしないでください。」ということを指しています。略して「信義則」とも言われます。宅建業法でも「宅建業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。」と規定しています。
誇大広告の禁止
宅建業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地や建物の「所在」「規模」「形質」、「利用の制限」「環境」「交通その他の利便」「代金、借賃等の対価の額・支払方法」「代金、交換差金に関する金銭の貸借のあつせん」について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示は禁止されています。
広告とは
新聞、ラジオ、ダイレクトメール、インターネット、折込チラシ等すべての方法が広告の対象となります。
おとり広告
「取引する意思のない不動産の表示」や「実際には存在しない不動産の表示」をおとり広告といい、このおとり広告も誇大広告の禁止の対象となります。つまり、おとり広告も禁止です。 【注意点】
- 他社Aが作成した広告をそのまま自社B名義で広告した場合、広告したのはBなので、Bが誇大広告の責任を問われる
- 広告により損害を受けた者がいなくても、誇大広告を表示した時点で違反となる
誇大広告の禁止に違反するとどうなる?
業務停止処分事由に該当し、さらに6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科になります。
広告開始時期の制限
宅建業者は、宅地や建物が未完成の場合、開発許可や建築確認その他法令に基づく許可等の処分があった後でないと、未完成の宅地や建物の売買や貸借の広告をしてはいけません。 つまり、開発許可や建築確認等の処分前に、未完成物件の広告をすることは禁止されているということです。
未完成物件とは?
宅地の場合:造成工事が完了していない土地建物の場合:建築工事が完了していない建物 広告開始時期の制限を受けるのは上記未完成物件だけです。完成物件についてはいつでも広告ができます。
許可等の処分とは?
都市計画法 | 開発許可、市街化調整区域内の建築許可 |
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建築基準法 | 建築確認 |
宅地造成等規制法 | 宅地造成工事規制区域内の宅地造成の許可 |
土地区画整理法 | 施行区域内での建築行為などの許可 |
農地法 | 第3条・4条・5条の許可 |
国土利用計画法 | 規制区域内の権利移転の許可 |
契約締結時期の制限
宅建業者は、宅地や建物が未完成の場合、開発許可や建築確認その他法令に基づく許可等の処分があった後でないと、未完成の宅地や建物の売買の契約を締結してはいけません。 つまり、開発許可や建築確認等の処分前に、未完成物件の売買に関する契約をすることは禁止されているということです。 【注意点】 貸借については契約締結しても違反にはなりません。
広告開始時期の制限 | すべての取引が対象 |
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契約締結時期の制限 | 自らが売買・交換する場合、売買・交換の媒介・代理をする場合が対象 ※貸借に関する取引は対象外 |
取引態様の明示
宅建業者は、宅地・建物の売買・交換・貸借に関する広告をするときは、「売主」なのか「代理」なのか「媒介」なのか (=「取引態様の別」という)を明示しなければなりません。 宅建業者は、宅地・建物の売買・交換・貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければなりません。
取引態様の別を明示すべき時 |
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- 取引態様の明示方法は口頭でもよい
- 取引態様の明示義務に違反した場合、業務停止処分事由に該当するが、罰則はない
不当な履行遅延の禁止
宅建業者は、その業務に関してなすべき宅地・建物の「①登記」「②引渡し」「③取引に係る対価の支払い」を不当に遅延する行為をしてはいけません。
不当に遅滞するとは?
利益を得る目的としたり、怠慢などを理由に、契約期日までに義務を履行しないことを言う。
不当な履行遅延の禁止に違反するとどうなる?
業務停止処分事由に該当し、さらに6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科になります。
秘密を守る義務(守秘義務)
宅建業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはいけません。
- 宅地建物取引業を営まなくなった後であっても、守秘義務はある
- 宅建業者の従業者も同様に守秘義務を負う(従業者で亡くなった後も同様)
- 正当な事由があれば、秘密を漏らしてもよい
守秘義務がない正当な事由とは?
- 本人の承諾がある場合
- 裁判上の承認として証言する場合等
手付貸与等による契約締結誘引の禁止
宅建業者は、手付を貸したり(手付貸与等)して契約の誘い込むことは禁止されています。
手付の貸与等とは?
- 現実に宅建業者が手付金を貸し付ける行為
- 約束手形によって手付金を受領する行為
- 手付金の分割払いを認める行為
- 手付金を契約後に受領することとし、契約締結時に受領しない行為(手付金の後払い)
手付貸与等による契約締結誘引の禁止に違反したらどうなる?
業務停止処分事由に該当し、さらに6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科になります。 (1)現実に宅建業者が手付金を貸し付ける行為 (2)約束手形によって手付金を受領する行為 (3)買主が手付予約をした場合において、宅建業者が当該予約債務の保証人となる行為 (4)手付を数度に分けて受領する行為 (5)手付金を事後に受領することとし、契約締結時に受領しない行為